先日あるセミナーを受講し、イノベーションと権力格差指標(PDI指標;Power Distance Index)に関する面白い話を聞きました。
権力格差とは「その国において、権力の弱い人々が、どれだけ権力の不平等を受け入れているか」ということです。
そしてPDI指標は儒教やカトリックの国々では高く(風通しが悪い)、プロテスタントの国では低い傾向があるそうです。
儒教は目上の人を、カトリックはローマ教皇を尊敬・崇拝するものです。
プロテスタントは宗教革命後の宗派で神と自分の対話を行うようなイメージです。
日本のPDI指標は54で世界の中間くらいです。
米国は40です。
その他の国のPDI指標は次の通りです。
ロシア:93
中国:80
ドイツ:35
スウェーデン:31
オーストラリア:11
権力格差指標(PDI指標)とは「組織内の風通しの悪さ」を測る指標としても使うことができるようで、イノベーション等と面白い相関関係があるようなので、ご紹介します。
イノベーションはプロテスタントの国で起こりやすい
権力格差指標が低い(風通しの良い)国ほど、イノベーションが生まれやすいそうです。
つまり自分よりも上位の存在に対して、遠慮や畏怖の気持ちが出やすい儒教やカトリックの国々ではイノベーションは起こりにくく、神に対しても物申すプロテスタントの国々の方がイノベーションは起きやすいという訳です。
確かに日本でも高齢者・親・上司の存在感はかなり高く、配慮や遠慮・忖度する人も多いですよね。
目上の存在を敬う文化を持つ日本でイノベーションが起きにくいのは非常に分かりやすいですが、カトリックもそうであると言われると面白い話です。
ちなみに音楽のロックもプロテスタントの国で名盤が生まれやすいそうです。
(体制への反骨心などを表現しやすいから??)
権力格差指標と生存率
権力格差指標とヒマラヤ山脈登山隊の生存率を調べると、イノベーションと同様に相関関係があるようです。
儒教やカトリックの国よりもプロテスタントの国から来た登山隊の生存率の方が高いそうです。
儒教やカトリックの国の登山隊はリーダー格の意見が絶対であり、リーダー格の人間に物申す人は少なく、リーダーの判断ミスが生存に直結します。
対してプロテスタントの国から来た登山隊は「神に物申す」くらいですから、リーダー格に物申すことは平気であり、結果としてチーム内の様々な意見が発生することになります。
これにより重大な判断ミスが減り、生存率も上がるというカラクリです。
重大な判断ミスは個人の能力よりもチーム内のコミュニケーション不足だと言えるでしょう。
投資判断に取り入れても良い権力格差指標
この権力格差指標(PDI指標)というのは初めて知りましたが、面白い指標だと思いました。
そして投資判断にも使えると考えています。
権力格差指標が低い方がイノベーションは生まれやすいのですから、個別企業の投資候補先であれば、社長の宗教・宗派や出身国がプロテスタントの国か調べるのも良いでしょう。
国全体に投資するならプロテスタントの国かどうかを気にするのも良いと思います。
私も少し気にしてみようかと考えています。