「褒め活」や「褒める育児」、「新入社員を褒める」のように褒めることは良いことだと考える人は多いと思います。
人は褒められることで自己肯定感が高まるそうですが、私は懐疑的です。
アドラー心理学の観点を用いて、褒めることの危険性について解説していきます。
人が孤独を恐れる理由
人間が狩猟採集民だった頃、人間は集団を形成しないと生きていけませんでした。
そもそも人間は自然界では身体的に弱い生物です。
その弱さ故、生存戦略のために集団を形成してきた歴史があります。
つまり人間にとって孤立は生存戦略の危機に繋がり、死を連想させます。
だから人は本能的に孤立を恐れるのです。
そして孤立を恐れるからこそ、人の根源的な欲求として、集団のなかで「ここに居ても良いんだ」という所属感を求めるのです。
現代風に言えば、「心理的安全」と言う感じです。
褒めると競争が生まれる
人は集団のなかで特権的な地位、特別な地位にいたいと考えています。
なぜならそれが孤立を防ぐことになるからです。
所属する集団で特権的な地位につき、その他大勢から抜け出すことが孤立を防ぐ方法なのです。
特権的な地位を目指す人々が増えると競争が生まれ、駆け引きが起こります。
他者よりも自分がもっと褒められたいという欲求が働きます。
そして競争相手である他者を敵だとみなすようになります。
褒めることにより、競争が生まれる。
そしてもっと褒められたい、認められたいと思うようになります。
その欲は承認欲求に繋がっていきます。
承認欲求を満たしてはいけない
承認欲求を満たす=他者の期待を満たす
他者の期待を満たす=他者の人生を生きる
そして承認欲求を求めることは他者に自らの価値を決めてもらうことを意味します。
これは依存に繋がります。
他者にネジを巻いてもらわないと(他者からの承認がないと)動けないゼンマイ仕掛けの人形になってしまうのです。
これに対して自立は自分で自分を承認し、自らの価値を自らに与えることです。
何度も言いますが、褒めることは競争を生み、他者を敵と見なします。
そして結果的に他者からの承認欲求を求める人生に繋がります。
これは自立への教育とは真逆の依存への教育になります。
親がやるべきこととは褒めることではない
親が褒めることで、人や子どもは自分が特別であると実感します。
これが巷で話題の自己肯定感が高まるというロジックです。
そしてもっと褒められたいと思い、褒められるために行動してしまいます。
そして褒められるために特別になろうとするのです。
親がするべきことは子どもを尊敬し、「あなたは今のまま、ありのままの自分で良いのだ」と伝え続けることです。
そして子ども達に特権的な地位につく必要はないこと、集団の皆は競争相手ではなく仲間だと認識してもらうことです。
ありのままの自分でいることへの勇気づけを行うのです。
特権的な地位などなくとも、「あなたはかけがえのない唯一無二の人間なのだ」と伝え続けることです。
まさに普通であることの勇気です。
人と何が違うかに価値をおくのではなく、私らしいことに価値をおく。
そしてその価値は自らが決める。
そういう勇気づけが教育には大事なのです。
褒めることの背後にある危険な思想とは?
また褒めることは相手を操作したいとの思惑が隠れています。
さらに能力のある者から能力のない者への言葉となります。
子どもや新入社員に対して「褒める」という行為は「親(自分)に都合の良い」行為を「もう一度してほしい、繰り返して欲しい」という意図が隠れています。
相手を格下に見ているから褒めるという行為をしてしまうのです。
子どもと親に本来上下関係はなく、対等な関係です。
こういう危険な思想が褒めることには隠れています。
あなたは誰かを褒めていますか?
だとしたらあなたはその人を下に見ています。
人間は人によって使い分けができないそうです。
つまりあなたが誰かを褒めていたら、あなたは全ての人間関係で上下関係を無意識に作り出しているということになります。
この考え方を知ってから褒めるのを止めました。
そして褒められても嬉しくなくなりました。
今回紹介した内容は下記書籍を参考にしています。
嫌われる勇気 自己啓発の源流「アドラー」の教え [ 岸見一郎 ]
嫌われる勇気 自己啓発の源流「アドラー」の教え【電子書籍】[ 岸見一郎 ]
幸せになる勇気 自己啓発の源流「アドラー」の教え2 [ 岸見一郎 ]
幸せになる勇気 自己啓発の源流「アドラー」の教えII【電子書籍】[ 岸見一郎 ]
インデックス投資が継続できな理由もこの特別になりたい欲が関係していると考えています。