年金と言えば、多くの人がイメージするのが老後にもらう年金です。
これはいわゆる老齢年金というものです。
しかし、年金はそれだけではありません。
他にも障害、遺族、一時金など様々な制度があります。
マネーリテラシーが高い人も障害年金や遺族年金の支給要件や金額まではご存じないかもしれません。
本記事では障害基礎年金、障害厚生年金でもらえる金額やどのような場合に支給されるのか?を分かりやすく解説していきます。
障害基礎年金について
障害基礎年金とは国民年金における障害給付です。
国民年金については主に以下のような年金があります。
・老齢基礎年金
・障害基礎年金
・遺族基礎年金
国民年金加入者であれば、障害等級1~2級に該当する障害に限定されていますが、支給要件を満たすと、障害基礎年金が支給されます。
サラリーマンなど厚生年金加入者であれば、さらに厚生年金も支給されます。
本来の障害基礎年金
次の3つの要件を全て満たした場合に支給されます。
①初診日に関する要件
初診日において、次のいずれかに該当すること。
・被保険者であること
・被保険者であった者で、日本国内に住所を有し、60歳以上65歳未満であること
②障害認定日に関する要件
障害認定日において、その傷病により障害等級1級又は2級の障害の状態に該当すること
③保険料納付要件
初診日の前日において、当該初診日の属する月の2か月前までに被保険者期間がある場合は、その期間の2/3以上が保険料納付済又は保険料免除期間であること。
難しい言葉が並んでますね。
被保険者というのは、国民年金に加入している人ということです。
自営業やフリーランス、専業主婦(夫)なども含まれます。サラリーマンもそうです。
初診日とは初めて医師又は歯科医師による診察を受けた日のことを指します。
障害認定日とは初診日から起算して1年6か月経過した日のことを言います。
1年6か月以内に傷病が治った場合はその治った日が障害が認定日となります。
また、その症状が固定し、治療の効果が期待できない状態に至った日も含みます。
(足に障害をおったが、これ以上の治療でも変化がない場合など)
保険料納付要件とはきちんと国民年金の保険料を納付していた人又は収入が少なく、保険料を免除されていた人が対象ということになります。
ちなみに初診日の属する2か月前に被保険者期間がない場合は、保険料納付要件は問われません。(高卒で就職直後に事故など)
保険料納付要件については令和8年4月1日前の初診日がある傷病が原因の場合、初診日の属する月の2か月前から直近1年間に保険料納付済又は免除期間以外の期間がなければ、保険料納付要件を満たすことになっています。
つまり過去に保険料滞納なので、被保険者期間の2/3以上の要件を満たせなくても、直近1年間真面目に納付してればOKってことです。
障害基礎年金は精神障害も対象となります。
ここは民間の就労不能保険などと違う点ですね。
どのような障害で支給されるのか?
障害年金の分かりにくい部分の1つとして、どのような障害で支給されるのか?という点があります。
ちなみに障害等級1級とはこのような障害を指します。
障害等級1級は「身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状によって、日常生活ができない程度のもの。 (他人の介助を受けなければ自分の身の回りのことができない程度)」とあるように、重篤な障害です。
障害等級2級はどうでしょうか?
身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が、 日常生活が著しい制限を受けるか又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの。 (必ずしも他人の助けを借りる必要はないが、日常生活は極めて困難で労働により収入を得ることができない程度)
つまり労働収入を得るのが難しいほどの障害の場合に障害基礎年金が支給されます。
若くして大きな障害を負ってしまうと生活費などに苦労しますよね。
そのためのセーフティーネットが障害基礎年金という訳です。
障害基礎年金はいくらもらえるの?
障害基礎年金の金額は次のように定められています。
障害等級 | 年金額(年額) |
1級 | 2級の年金額×1.25 |
2級 | 780,900円×改定率 |
改定率はさほど気にしなくても良いです。金額に大きな違いはありません。
障害等級2級で約78万円、1級で約98万円です。年間でこの金額です。
さらに子どもがいる場合はこの金額に次の加算があります。
子どもは受給権者(障害年金をもらう人)に生計維持されていて、18歳以後の最初の3/31まで(一般的な高校卒業まで)です。
(障害等級に該当する子がいる場合は20歳まで)
子ども(1人につき) | 加算額(年額) |
第1子、第2子 | 224,700円×改定率 |
第3子以降 | 74,900円×改定率 |
つまり家族4人(夫婦+子ども2人)で障害等級2級の場合の障害基礎年金の金額は
78万円+22.4万円×2人=122.8万円となります。
毎月10万円支給されるイメージですね。
子どもが高校卒業したり、生計維持関係でなくなると、子どもの加算はなくなり、また78万円に戻ります。
その他にも、婚姻した時、受給権者の配偶者以外の養子となった時、離縁した時も同様に加算がなくなります。
障害基礎年金がもらえなくなるのはどんな時?
次のいずれかに該当した時は受給権が消滅します(失権)
①死亡した時
②障害等級3級以上に該当する障害の状態に3年以上ない場合
・65歳未満で3年以上経過した場合
→65歳で失権
・65歳を跨いで3年が経過した場合
→3年経過した日に失権
・65歳以降で3年が経過した場合
→ 3年経過した日に失権
つまり障害の状態が続く限りは死ぬまで貰えるということです。
また障害の状態が回復して、障害等級2級に該当しない状態になった場合は支給停止となります。
この時は65歳に達するまで受給権は消滅しません。
なので60歳で再発して、2級に該当する場合は3年以上の支給停止期間があっても、支給されます。
65歳からは老齢基礎年金が受給できますので、障害基礎年金は失権するわけです。
ただし、障害基礎年金は非課税ですが、老齢基礎年金は課税対象です。
この点には注意が必要です。
失権の他に支給停止の要件もあります。
この場合は受給権が消滅するわけではありません。
あくまでも他の保障がある又は上記の障害状態が2級以上に該当しない場合を指します。
①労働基準法の規定による傷害補償を受けることができる時
→6年間支給停止
②障害の状態が障害等級に該当する程度の状態に該当しなくなった時(その期間65歳に達する前日まで)
20歳前の傷病に基づく障害基礎年金についてはこの他にも支給停止要件がありますが、ここでは割愛します。
障害基礎年金のまとめ
障害基礎年金についてまとめます。
①支給要件を満たす必要がある
初診日、障害認定日、保険料納付の3つの要件を満たすこと
②障害の程度
障害等級2級以上の障害の場合に支給
精神障害も含まれる
③年金額(年間)
障害等級2級で約78万円
障害等級1級で約98万円
子ども(生計維持+年齢制限)の加算あり
④支給停止条件と失権条件がある
労働収入が絶たれた場合、障害基礎年金はセーフティーネットの役割を果たします。
しかし、その支給額は非常に低額であり、一人が生活していくのもままならない金額です。
サラリーマンなどの厚生年金加入者はこの障害基礎年金にプラスして障害基礎年金がもらえるケースがほとんどです。
ただ、自営業やフリーランス、専業主婦(夫)などの国民年金のみの加入者は自助努力が必要となってきますね。
次回は障害厚生年金について解説しようと思います。